医療保険とは、病院などの医療機関の受診で発生した医療費の一部、又は全額を保険者が加入者に給付する保険です。医療費は高額であるため、医療費の負担による貧困を防ぐために作られました。
医療保険には政府が行う公的なものと、保険会社が行う民間のものとがあり、それぞれ役割が異なります。まず、公的の医療保険は日本では国民健康保険と呼ばれるものがあり、会社員・自営業などを問わず強制加入するものとなっています。
この保険は適用される治療の医療費を負担するもので、加入者は本来支払うべき医療費の3割(2009年現在)を支払うことで治療を受けることができます。
一方の民間で行われる医療保険は任意加入することができ、特定の疾病にかかった場合、治療費や入院費などに充てるための保険金が保険会社から支払われるというものです。
日本の医療を考える場合、国民皆保険制度が前提とされ、患者の窓口負担の額や保険加入者の保険料の増減が中心になり、その制度の在り方が問われることが少なかった。
本書は、従来の不毛の議論から脱し冷静な制度理解と制度設計に向かうための基礎と構成となっている。
第1章 わが国の医療保険制度の歴史と展開(島崎謙治)は、わが国の医療保険の成立史を振り返り、職場単位の保険と地域単位の保険に編成される経過を示し、現時点で医療保険の何が問われているのか?制度に潜む「無理」の所在をあぶりだし、本書の中心命題に対する基礎知識を提供している。
第2章 診療報酬制度の理論と実際(遠藤久夫)は、公定価格の設定の現行ルール特に政策誘導・インセンティブの働きとそれに対する各関係者の「適正化」の試み精解している。
第3章 わが国の診療報酬政策の展開と今日的課題(高木安雄)は、特に小泉政権の医療改革と一括りに名付けられてしまった最近の制度改革の動きの背景等を解明している。
第6章 薬価の現状と課題(白神誠)は、マスコミ上でも度々取り上げられた薬価の仕組みを解説している。
第7章 レセプト情報を用いた医療費分析の可能性と限界(岡本悦司)は、医療費分析の基礎資料となるべきレセプト情報が、実は使用に不向きな制度になっている状況が明らかにされる。
第8章 保険者機能強化論の経済・政策学(尾形裕也)は、「保険者機能」強化論と呼ばれる、保険者への「当事者」性の強化論が起こる背景の理解とその無理性が浮かび上がる。
第9章 医療保険の給付範囲をめぐる論点(池上直己)は、限られた財源の中保険が果たすべき役割の論理整理が行われ、混合診療の論点が示される。
今後も医療保険の制度改革は続くものと思われる。地方が主体となる改革も既に始動している。 有限の医療資源を「保険」制度を用いて配分する仕組みを持つわが国で、冷静な議論に資する一冊と思います。
高齢化社会を迎え、効率化を主目的とする低医療費政策のもとで、医療「改革」が、すすめられている。病院経営を考えるときに、医療経済学は、必須の分野となっており、医療政策がどういう根拠ですすめられているかを理論的、歴史的に概観できる本講座は、初学者にとって、必須の事項を網羅的に提示されており、非常に重宝する内容となっている。特に、第2巻は、現在すすめられている、診療報酬の支払いが、出来高払いから、包括制への移行となっている背景を明らかにしている。06年度の診療報酬改定で、療養病床では、病棟単位の定額制による包括払いの評価から、患者ごと、1日ごとの評価による医療区分に従った包括払いが導入された。12年度の介護療養病床が廃止が決定され、療養病床数の大幅削減がうちだされている。今後の、亜急性期を含む病床のあり方が、臨床現場では、先行き不透明で08年、10年の診療報酬改定の動向に不安を抱いていた状況であった。今後の政策誘導がどうすすめられるかについて、池上直己氏による、第5章「急性期以外の入院医療のための新たな支払い方式」では、亜急性期病床も療養病床に収斂されていくことを予感させる中味となっており、臨床現場でも、病床運用のあり方、一般病床に固執する意味はあるのかどうかなどの業務の見直しなど根本的に検討をうながす内容となっており、今後の病院経営に大きな示唆を与える中味となっている。
社会保障医療の今後を考える際、それがこれまでどのような経緯を辿って現在の姿になったのかを知ることは非常に大切なことである。最近喧しい市場原理の社会保障医療への単純な導入論が、公的医療保険と医療供給体制を成り立ちを考えれば、殆ど意味のないことに気付く。医療改革は広く国民全体の関心ごとであるために、色々な人が色々なことを発言しているが、社会保障としての医療の本質をわきまえた議論は殆どみられない。この本は、そうした、医療制度に関する議論をする上で最低限持っていなくてはならない見識を提供してくれる。医療関係者必読の書である。
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